2. <企>の「この人を見よ!」 第1回

王様の耳はロバの耳!

 

ウチの店主は、ひと昔前の某大手出版社の経営者と同姓同名字も同じである。同一人物かと思いきや実は違うそうだ。

 

自宅には空中配線のオーディオ装置が居座り、CDラックを見ると、J.S.バッハのカンタータ全集が数セット(ちなみにひとセット50枚前後)から「海ゆかば」、はてはニュートロルス(70年代イタリアのプログレバンド。現在マニア以外知るものは少ない)まで、なかなかに色彩豊かである。

常に仕事に忙殺されており、予定が入るとすかさず鉄道時刻表の如く細字で埋まったシステム手帳が懐を出入りする。今そこに居たかと思えば、振り向けば50キロは先に居り、再び眼前に現れる。

そのありさまは夏場のアルマジロを見ているようだが、その顔はアゴひげを剃り落したヤギに似る。

 

まとめると、やきものギャラリーを経営するなどという実に奇特な人物である、ということだ。ただし残念なことに先述の理由で、店内でこの店主を見かけることは、四万十川でニホンカワウソに遭遇する確率に限りなく近い。

それでもどうしても見物を希望する方には「てがみ」をおすすめする。

店主は「てがみ」が好きなようである。