池西 剛 Go Ikenishi
略歴
1961年
大阪府に生まれる。
各地にて日本、朝鮮、中国の陶磁、古陶磁を学ぶ。
1993年
愛媛県今治市に五蓮房登窯、単室窖窯を築窯。
以降個展にて作品を発表。
2012年
岡山県和気市に工房を移転。

「やきものは読み物である」これは池西氏や私がよく口にする言葉です。
これが真であるならば、やきものも小説などと同様に様々な技巧を凝らした〝見所〟を配しておかねば底の浅いものとなってしまいます。しかしやきもの界には「作者は何もせず天啓に任せる方が良い。」というまことしやかな嘘がまかり通り、若手作家や蒐集者の目を眩ませます。それが間違いであることは、志野茶碗〝卯花墻〟をはじめとした銘碗を見ると一目瞭然で、これらの作品には作者の強い意志により〝美〟や〝見所〟が膨大に配せられており見る者の心を震わせ、だからと言って茶碗を俯瞰すれば泰然自若、ただ黙ってオーラを纏うばかりで、鼻につく作為など一遍も感じさせません。「作品を触り過ぎたり、作者の意思が強く入り過ぎると良いものにならない。」と言うのは、単にそれをうまく表現しえない技術不足を棚に上げた大家の言い訳だと気付かされます。
今回久し振りに池西剛氏の作品紹介を書くに当たり、作品選別をしていて上記の事柄を強く思いました。氏の作品には蒐集者として培ったやきものの〝美〟や〝見所〟など心踊らされる趣向が無数に配されており、〝読み物〟として十二分に通用する力を感じます。今回ご紹介いたします作品をご覧頂きご意見を賜れば幸甚に存じます。

ギャラリーラボ顧問 宇高巧